今回はどんな胸糞悪い映画よりも胸糞悪い映画「胸騒ぎ」を紹介します。
初めに言っておきますが、とんでもなく恐ろしい作品です。
何が恐ろしいかというと色々なんですけど(笑)、特にクライマックスです。
クライマックスまではずっと不快感を覚えるシーンが続き、ずっとストレスを感じるんですが、どちらかというとブラックコメディのような雰囲気もありました(後で説明しますね)。
しかし、クライマックスで一気に観客の心をへし折ってきます。
ちなみに筆者は鑑賞後しばらくの間、手が震えていました。
「間違いなく世の中に存在するすべての胸糞映画の中でナンバー1だ」と。
でも鑑賞後、しばらくたって冷静になって作品を思い返してみると、ただの胸糞悪い映画じゃないのかもしれないと思うようになりました。
と言うのもこの作品、丁寧に紐解いていくとめちゃめちゃ勉強になる超良作なんですよ。
北欧映画なんですが日本人こそ観るべきだと思います。
本作を観ることで今後のあなたの生き方、価値観、アクションが大きく変化するかもしれません。
じゃあ順番に説明していきますね。
・胸糞悪い映画が大好物な人
・心理的に不快感を覚える描写に十分慣れている人
・嫌なことをはっきり嫌だと伝えられない人
・イイ人、いい奴
あらすじ
イタリアでの休暇中、デンマーク人夫婦のビャアンとルイーセ、娘のアウネスは、オランダ人夫婦とその息子と出会い意気投合する。後日、オランダ人夫婦からの招待状を受け取ったビャアンは、家族を連れて人里離れた彼らの家を訪れる。再会を喜んだのも束の間、会話のなかで些細な違和感が生まれていき、それは段々と広がっていく。オランダ人夫婦の“おもてなし”に居心地の悪さと恐怖を覚えながらも、その好意をむげにできない善良な一家は、週末が終わるまでの辛抱だと自分たちに言い聞かせるが——。徐々に加速していく違和感は、観る者を2度と忘れることのできない恐怖のどん底へと引きずり込む。
引用:映画「胸騒ぎ」公式サイト
作品情報
引用:映画.com
原題 | Gaesterne / Speak No Evil |
監督 | クリスチャン・タフドルップ |
主演 | モルテン・ブリアン、スィセル・スィーム・コク他 |
製作国 | デンマーク・オランダ合作 |
製作年 | 2022年 |
上映時間 | 95分 |
レイティング | PG12 |
登場人物
引用:映画.com
とりあえず以下の4人だけ覚えてください(上の画像はオランダ夫婦)。
デンマーク人夫婦には娘が、オランダ人夫妻には舌がなく言葉を話せない息子がいるとだけ覚えておいてください。
ここでは話を単純化するため「オランダ人夫妻=悪」と捉えてください。
・ビャアン(デンマーク夫)演:モルテン・ブリアン
・ルイーセ(デンマーク妻)演:スィセル・スィーム・コク
・パトリック(オランダ夫)演:フェジャ・ファン・フェット
・カリン(オランダ妻)演:カリーナ・スムルダース
予告編の文言を抽出
引用:映画.com
予告編に登場する言葉は物語を紐解く上で非常に重要なキーワードになります。
キーワードになりそうな言葉を以下に列挙しました。
・北欧発の最狂ヒューマンホラー
・この“おもてなし”何かがおかしい
・血も凍るような恐怖
・あの家族嫌な感じがする
・ちょっとした違和感が積み重なって
・少しやり方が違うだけでしょ?
・ラスト15分が本当に恐ろしい
・善意が悪意を暴走させる
ネタバレなし感想
作品を観る心構え
引用:映画.com
本記事の最初に述べたとおり本当に恐ろしい作品で、クライマックスは血も魂も凍り付くような描写があります。
ぶっちゃけクライマックスまではどんな人でも観れると思います(イライラはすると思いますが)。
しかし、何度でも言いますがクライマックスは人によっては失神するレベルです。
それだけは覚悟して鑑賞した方がいいです。
そして鑑賞後もとても嫌な気持ちが残ります。
なので、本作を観た後にリハビリとしてメンタルを回復できるように何かしらポジティブな予定を入れておきましょう。
例えば、自分にとってハッピーな映画を観るとか、ジムに行って汗を流すとか、友達と飲みに行くとか。
会話にストレスを感じる
引用:映画.com
デンマーク夫妻とオランダ夫妻の会話は客観的にみてストレスを感じずにはいられません。
例えばデンマーク妻はベジタリアンなんですが、オランダ夫はそんな彼女に対して執拗に猪肉を食べるように勧めるんです。
デンマーク妻は「いや、食べられません…」みたいに拒否するんですが、デンマーク夫は「いいからどうぞ」みたいに半ば強要しているような圧力をかけているんです。
しかし、その圧力に屈して猪肉を食べてしまうんです。
このやりとり、どう考えてもおかしいですよね。
相手が嫌だと言っているのに何度もしつこく勧めるって冷静にあり得ない行為ですよね。
人によっては「嫌だって言ってんじゃん!!」とブチギレる人もいるでしょう。
しかし、本作ではデンマーク妻は空気を読んで食べてしまいます。
それにデンマーク夫も「まあ食べないと失礼だし我慢しなよ…」みたいなことを小声で妻に言っちゃうんです。
同調圧力
さきほどの猪肉の話を聞いて、皆さんどう思いました?
「俺だったらフツーに断るけどね(笑)」と思いました?
でもあなたが同じ場面に遭遇したらハッキリ断ることができると断言できますか?
飲み会で上司や先輩にビールの一気飲みを強要されて嫌々飲んだことありませんか?(近年の飲み会ではそういった強要は少なくなったと聞きますが)
ちなみに筆者は大学時代、サークルの飲み会で先輩にビールのイッキ飲みを勧められましたが嫌だったのでハッキリ断ってしまいました。
それによって場の空気が凍り付き、結果的に僕は嫌われて飲み会に誘われなくなりました(笑)
「嫌なことははっきり嫌だと言いたい」
「でも嫌な気持ちをはっきり伝えると嫌われる」
この2つの感情の狭間で悩み苦しんでいる方いませんか?
特に空気を読む文化が根強い日本人にとっては関心の強い話題だと思います。
そんな人にはぜひ本作を観て考えてもらいたい。
ちなみに解決方法は「嫌われないように上手く断る」だと思います(口で言うのは簡単なんですけどね…)。
余談ですが筆者は「嫌われないように上手く断る」ができません。
嫌なことをはっきり断ることはできますが、なぜかいつも嫌われます(伝え方の問題かもしれません(笑))。
もはやブラックコメディ
引用:映画.com
クライマックスの酷いシーンまではもはやブラックコメディのようなシーンが続きます。
先ほど説明した猪肉の話もそうですが、ちょっと笑ってしまうシーンが続きます。
例えば、オランダ夫妻の息子は不器用なのでダンスをやらせても上手く踊れないんですよ。
デンマーク夫妻の娘と一緒に頑張って踊るんですが、動きがぎこちないのです。
それを見ていたオランダ夫が「どうして上手く踊れねえんだよ!!」みたいにブチギレます。
このシーンはさすがに笑っちゃいますwww
「アクターズスクールかよ!(笑)」と。
しかしまあ真面目な話、人前で子供を怒鳴り散らかすなんて、時代錯誤も甚だしく、どう考えても正常な大人がやることではありません。
他にはオランダ夫妻にバーみたな場所に連れていかれて散々飲み散らかすんですが、その勘定をすべてデンマーク夫妻が負担させられます。
その奢らされたシーンも笑っちゃいました。
胸糞ポイント
もちろん、オランダ夫妻のやっていることが非人道的すぎることも胸糞ポイントとしてあります。
オランダ夫妻のやっていることはかなり極端な例です(現実世界にこういう人がいないとも限りませんが…)。
しかし、筆者個人的に1番の胸糞ポイントは、デンマーク夫が「ただのイイ人」なことです(後で詳しく話します)。
この夫、他人に嫌われないように相手の顔色ばかり窺って結局大切なものを何も守れてないんですよ。
デンマークの奥さん側の方が冷静で賢いんですよ。
奥さんは要所要所で適切な判断を下します。
客観的に観ても「そうだよ!奥さんの言っていることが正しいよ!その通りにしなよ!」と思ってしまいますが、夫が誤った判断を下してしまうんですよ。
辛辣な言い方をしてしまうと、この夫は無能です。
よりネガティブに捉えるならば、「自分のメンツを守るために本当に大事なものを切り捨てている卑怯な人間」にも見えました。
こういう人は得てして仕事もできません。
なぜなら適切な優先順位をつけることができないからです。
家族を守るためには、自分が嫌われてでも断る勇気を持つべきです。
まあ、この無能夫の判断を許容して従ってしまった奥さんも無能なのかもしれません。
とまあこんな感じで夫のクソな判断に終始イライラします。
善意が悪意を暴走させる
引用:映画.com
これは予告編で登場した言葉です
筆者はこの言葉が本作の最も核となる概念だと思っています。
ところでみなさんにお聞きします。
あなたは「イイ人」ですか?
「あいつはイイ人(いい奴)」とかってよく言いますよね。
あなたは周囲からそのように言われるようなキャラクターですか?
「イイ人」っていっても言葉が曖昧過ぎますけどね。
でも、「イイ人」であることはいかなる場合も素晴らしいことですか?
筆者は本作を「イイ人であるが故の悲劇を描いた物語」だと解釈しました。
本作では「オランダ夫妻=悪」という描かれ方をしていますが、オランダ夫妻は何を考えているのか分からなくて、得体が知れないんですよ。
しかし、オランダ夫妻をよくよく観察してその正体を考えてみた結果、「イイ奴をうまくコントロールすることに長けている悪人」だと解釈しました。
ちょっと抽象化すると「ギバー(イイ奴)を巧みに利用するテイカー」です。
もしかしたらみなさんがいる学校や職場、家庭にもいるかもしれません。
デンマーク夫妻(特に夫)は、典型的な「イイ人」なんです。
「嫌だけどはっきり嫌だと言えない」
「誘いを断ったら相手を不愉快にしてしまう」
このように考えてばかりいる「NOと言うことができないただのイイ奴」は、はっきり言ってテイカーの餌食です。
「善意は悪意を暴走させる」
デンマーク夫妻が良い人であるがゆえにオランダ夫妻の悪はどんどん加速していきます。
そもそも、このオランダ夫妻も近寄る人間を選んでいるんです。
「コイツは俺の言いなりになるはずだ」と判断した人間を選別してアプローチをかけているのです。
でもこういう人は、「自分の中に芯を持っているような心の強い人」には絶対に近寄ることができないはずです。
ただのイイ人は悪人をどんどん悪人にしていくんです。
悪い人間を裁くために警察や裁判所などの機関が存在するのに、仮にこれらの機関が機能していなかったらどうなると思いますか?
世の中は悪人だらけになると筆者は思います。
つまり、そういうことなのかもしれません(強引に締めくくります!)。
日頃から意思表示すべき
「何食べたい?」と聞かれて「なんでもいい」と答えるのは論外です。
しかし、そもそも「何食べたい?」という質問がダメだと思います。
なぜなら自分は何も意思表示していないからです。
決定権を他人に委ねるその生き方が既にアウトです。
デンマーク夫も、いつも人の顔色ばかり窺い、自分の本当の意思を伝えずに、いつも他人に流されて生きていることが伺えます。
冒頭のイタリア旅行のシーンでも、飲食店に入るか入らないかで家族3人で迷っているシーンがあります(記憶が定かではありませんがそんなシーンありましたよね?)。
些細なことですがその様子を見ていると、「この家族は優柔不断な人間の集まりなのかな?」と思ってしまいました。
このような「積極的に意思表示を行わない受け身の姿勢の積み重ね」が最終的に悲劇を招くんです。
大袈裟に聞こえるかもしれませんが「一事が万事」だと思います。
日頃から自ら意思表示をする癖を身につけるべきだと学びましたね。
まとめ
いかがだったでしょうか?
クライマックスにエグいシーンが待ってますが、それを乗り越えることができそうな方は絶対に観てください。
かなりメッセージ性の強い良作だと筆者は思いました。
監督が伝えたいメッセージは「オランダ夫妻のような恐ろしい人間も存在する」ということではないと思います(それもあるかもしれませんが)。
そんなことよりも「人の顔色ばかり窺う受け身な姿勢は相手の悪を加速させるゾ!」というメッセージの方が濃いように思えました。
ではみなさんお気をつけて本作をご覧ください。
今日もご愛読いただきありがとうございました。
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