今回は映画「哀れなるものたち」の正直な感想を述べます。
基本的にネタバレなしで感想を言いますが、作中のセリフなども一部紹介しているので、内容を一切知りたくない方はご退出願います。
本作はアカデミー作品賞を筆頭に11部門ノミネートされ、結果的に主演女優賞、衣裳デザイン賞など合計4部門で受賞しました。
そんな本作を筆者は公開中に劇場で一度観て、Disney+で配信開始後2度目の視聴をしました。
結論、タイトルにも書いたとおり「絶対観るべき!」と断言できる大傑作です。
エンタメ映画として面白いだけでなく、考察すべき事項が多くあって深みのある作品です。
つまりメッセージ性が濃く、かなり勉強になると思います。
しかし、後でも詳しく書いていますが嫌いな人はマジで嫌いみたいです。
こんなに賛否が分かれる作品も珍しいと思います。
じゃあ順に説明していきます。
※令和6年5月時点の情報です。現在は配信終了している場合もありますので、詳細はDisney+の公式ホームページにてご確認ください。
あらすじ
不幸な若い女性ベラは自ら命を絶つが、風変わりな天才外科医ゴッドウィン・バクスターによって自らの胎児の脳を移植され、奇跡的に蘇生する。「世界を自分の目で見たい」という強い欲望にかられた彼女は、放蕩者の弁護士ダンカンに誘われて大陸横断の旅に出る。大人の体を持ちながら新生児の目線で世界を見つめるベラは時代の偏見から解放され、平等や自由を知り、驚くべき成長を遂げていく。
引用:映画.com
レビューしている人がみんな口を揃えて言っていることですが、「見た目は大人、頭脳は子供」という、いわゆる「逆コナン君」です。
常識など一切持ち合わせていないので、大人の身体を活用して自由奔放に動き回ります。
そんな主人公はどのような成長を遂げていくのか?というのが話の本筋だと筆者は解釈しました。
作品情報
引用:20世紀スタジオ公式サイト
原題 | Poor Things |
監督 | ヨルゴス・ランティモス |
主演 | エマ・ストーン、マーク・ラファロ、ウィレム・デフォー |
製作国 | イギリス |
製作年 | 2023年 |
上映時間 | 142分 |
レイティング | R18+ |
絶対に観てはいけない人たち
こんな人・TPOでは観ない方がいいです。
濡れ場
生々しい性描写や自慰行為が多いので、以下のような場合は一緒に観ない方がいいです。
筆者も劇場で観に行ったとき、女性単独のお客様が多かった印象です。
カップルは見かけませんでしたね(笑)
一緒に観てしまうと、場が凍り付いてかなり気まずくなるはずです。
・まだ付き合っていないデート段階のカップル
・付き合いたてのカップル
・子供を含めた家族での鑑賞(そもそもR18)
著しく嫌悪感を抱かせるシーン
引用:20世紀スタジオ公式サイト
グロテスクなシーンも多く含みます。
例えば以下のようなものです。
・臓器をいじる
・死体損壊
・頭部を入れ替えた世にも奇妙な動物(上の写真)
・自殺するシーン
ネタバレなし感想
結論めちゃめちゃ面白いです。個人的に大絶賛です!こんなに面白い作品に出会うことはそうそうありません。
美術面
引用:20世紀スタジオ公式サイト
これはみんな言っていることですが、全編を通して芸術的な映像がずっと流れます。
序盤のお屋敷をはじめとして、船の内装や旅の道中の景色など素晴らしいです。
なんかこう、メルヘンチックというか、メルヘンが行き過ぎてむしろグロテスクというか…(褒めています)
とにかくどのシーンも見たことのないような景色が広がっており、単純に飽きずに新鮮な気持ちで楽しむことができました。
演技
引用:株式会社ムービーウォーカーHP
やはりアカデミー主演女優賞を受賞したエマ・ストーンの圧巻の演技!
その演技は評価の観点から素晴らしいというよりは(筆者は批評家ではありませんが)、単純に観ていて飽きないようなエンタメ性に富んだ演技でした。
私のような「ただの映画好き」にとっては、秀逸な演技とか自然な演技とかどうでも良くて、「単純に観ていて面白いかどうか?」が大事なんです。
エマの演技はどこを切り取ってTikTokに流してもバズりそうな面白さがありました。
ずっと観てられる演技です。
筆者が特に好きなのが序盤の演技です。
脳みそが赤ちゃんなので自分の身体を頑張って動かしていますが明らかにぎこちないんですよ。
普通の演者がここまでやれるとは思えません。
エマ・ストーンも「今までで一番難しい役だった」と語っています。
途中のダンスシーンも見ものです。
余談ですがこのダンスシーンを観て「変態村」のあるシーンを思い出したのは筆者だけでしょうか?
クライマックス
クライマックスもとんでもなくインパクト強かったです。
これから観る方もきっと忘れられないラストシーンになるはずです。
筆者が初見で観たとき、「この作品は好きだけど、ラストシーンだけはいかがなものか…」と正直思いました(笑)
これは描写が嫌だったわけじゃなく、ストーリーの流れとして「これじゃダメなんじゃないの?」と思ってしまったんです。
むしろこの変態的な描写は筆者個人的には大好物でした。
しかし、2度目の視聴時には「まあ…これはこれで良かったんだろう…」と感じました。
賛否両論
公開当初から、X(旧Twitter)では本作の話で持ち切りでした。
最近ディズニープラスで配信が開始されたこともあり、再度話題が上がってきています。
ただ、本作はマジで賛否両論です。
タイトルで「絶対みて!」と言っておきながら恐縮ですが、かなり人を選ぶ作品だと思います。
決して万人受けする作品ではなく、嫌いな人はマジで嫌いだと思います。
作中に時折流れる奇妙な不協和音も不気味だし「生理的に受け付けない」という人がいるかもしれません。
中には「嫌悪感がすごくて最後まで観られなかった」という人もいました。
なので、ここまで本作をゴリ押ししておきながら、辛い想いをさせてしまったら申し訳ありません。
その際はすぐに観るのをやめてください。
しかし、生きていくうえでとても勉強になる作品だと思います。
少なくとも筆者は本作を視聴したことがきっかけとなり、これから自分の人生を歩んでいくうえでの重要なヒントを得ることができました。
【予習】作品のテーマ
筆者は本作のテーマを以下の2つのように解釈しました
①常識に縛られた哀れな人生
②女性の人生のあり方
※あくまで筆者の解釈です。的外れだったらすいません
これから観る人は上記2つの観点から視聴してみてください。
①常識に縛られた哀れな人生
引用:20世紀スタジオ公式サイト
原題が「Poor Things」であり「もの」なんですよね。
「者」とは言っていないので、「哀れな人」に限定されないんですよ。
筆者は「もの」を「人生」だと解釈しました(人生なんで「人」とも捉えられます)。
本作の最大のポイントはベラが世間的な常識や良識を持ち合わせていないことです。
そもそも設定がぶっ飛んでいますよね。
孕んでいる胎児の脳みそを自殺した本人の頭に移植するなんて、改めて設定がヤバくないですか?
設定が既にグロテスクです。
でもこの設定によって、「常識を兼ね備えていない大人」を主人公にすることに成功しています。
仮に常識を一切持たない大人の人間が現実の世界に爆誕したときに、どのように周囲の影響を受け、どのような思考過程を経て成長していくのかを順序だてて上手く描けていたと思います。
本作では、常識を持たないベラが非常に目覚ましい成長を遂げていきます。
繰り返しになりますが、ベラには社会常識、過去のトラウマ、先入観など一切ありません。
そのため、「やりたい」と思ったことを躊躇なくアクションに移します。
また、人前で傍若無人な言動もします。
貴婦人たちとオシャレにお食事している最中には、食べ物がまずいと思ったらペッと吐き出したり、別の席の赤ちゃんが泣いていると「あの子、殴ってくる」と言って殴りに行こうとしたり、やりたい放題です。
そんなことばかりやるので一緒にいたダンカンから、
「3つのことだけを言うんだ。①最高だわ②ステキよ③サクサクしたお菓子ね、いいな?」なんて言われちゃいます。
みなさんの周りにこんな傍若無人な大人いないですよね?
それと比較して、筆者を含め現実世界に多く存在する「常識という名の鎧」をガチガチに纏った大人は身動きがとれません。
自分や相手のメンツを考えて言いたいことも言えません。
やりたいことがあっても「こんなことをやってもどうせ無駄だよ」とチャレンジすることをあきらめてしまうんです。
それにより、いつまでたっても自分の殻を破ることができないんです。
子供の頃は好奇心の赴くままにやりたいことを何でもやって、時にはお父さんやお母さんに怒られたでしょう。
それがいつの間にか常識の呪いに縛られ、やりたいことではなく「何をやるべきなのか?」を重視するようになっちゃったんです。
子供心なんてとっくに置き忘れているんです。
なんと哀れな人生なんでしょう。
筆者はそうはなりたくないので、「常識との適切な距離感」を大事にしたいと思っています。
(一応言っておきますが、「常識=悪」ではないと思います。ベラのように公衆の面前で傍若無人に振舞うことが良いわけではないので)
つまり、監督の意図は分かりかねますが、本作は少なからず皆が持っている常識を否定しているように感じました。
そして「子供心を取り戻せ」と主張しているように感じました。
②女性の人生のあり方
指原莉乃さんが本作のプロモーション動画で
「もし、女性の生き方を一から選べたとしたら」
「自由に生きるってサイコーじゃない?」
と言っていたのが印象的です。
本作では女性軽視の発言も飛び交います。
まあ時代が時代なので、価値観が現代とは少しズレているようにも感じました。
現代は女性の生き方に対する認識も昔と比べると変わっているはずなので
「こんな男、今時いないでしょ!(笑)そんなに執着する?」
と思っちゃうくらい女性に偏見を持ち、支配欲の強い男性キャラクターも登場します。
その部分が筆者としては「少し現代離れしすぎているかな」と感じました。
そうは言っても1つ目のテーマ「常識に縛られた哀れな人生」と通ずるものがあり、女性の生き方に関する常識を再度見直すきっかけになり得るはずです。
まとめ
いかがだったでしょうか?
既に観た方の中には共感していただけた方もいるかもしれません。
私も若造でかつそれほど頭もよくないので的外れなことを言っている場合もあります。
もし、私とは別の視点がありましたらコメントで教えていただけると幸いです。
今日もご愛読いただきありがとうございました。
※令和6年5月時点の情報です。現在は配信終了している場合もありますので、詳細はDisney+の公式ホームページにてご確認ください。
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